愛する君に誓うこと

接近


「はぁ…。」

掲示を見てから、ロッカールームに戻ると、一気に力が抜けた。
思い返せば、ここ何日かずっと頭の片隅には異動の事がちらついていた気がする。

無機質な、白いロッカールームの天井を眺めていると、急に疲れが襲ってきた。
同僚たちが廊下で騒いでいる声が、すごく遠くに聞こえる。


「弦。私、頑張ったよ。」

無意識に出た言葉に、自分でもはっとする。
もう3年も前に別れた恋人の名前。
もう連絡先すら分からない、昔の恋人の名前。



遠くに聞こえる同僚たちの声に混じって、始業のベルが鳴るのが聞こえた。
今週中に引き継ぎの作業をして、デスクを片づけて、広報課に異動しなければならない。

疲れと思わず思い出した名前を振り払うように、頭を振ると、じんわりと首筋に気持ち悪い汗が浮かんでくる。
「今日、こんなに暑かったっけ?」
そう思いながら、立ち上がった瞬間、天井がぐにゃりとゆがんだ。

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