風_現実(7月10日20:40更新)
 エンジンの紡ぎ出す回転、そして排気音の高鳴り。

 それに連動するタコメーターの針が踊るように、血は騒ぎ、心は更に沸き上がる。

 そして、その躍動する気持ちを抑えるような儀式的とも言える行為。

 アイドリングに合わせ、油圧計が針を一定の位置を指す。

 やがて水温計の針が動きはじめ、それに連動するかのように油温計が目を覚ます。

 その瞬間を待っていた。

「水温、油温、油圧、異状を認めず。」

 丁寧に各メーターに目をやり、確認を声にする。

 4点式のシートベルトで、両手を使ってシートに身を縛りつける。

 私は、マシンと一体となる。
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