恋せよ乙女


「気を付けて。…またね」


背中で受けたその声は、毛布の中のくぐもった声ではなく、とてもクリアに聴こえた。だからこそ、



『またね』

その言葉の意味と反する様なとても優しい声に、鼻の奥がツーンと痛んだ。


それでもあたしは振り向かない。


「早く帰れよ」


それだけを言い残し、逃げる様にマンションを後にした。



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