forget-me-not
「ああー…。さては、黒川くんに惚れたなぁ?」
『違うっ、てば』
「じゃあだぁれ?好きな人できたからそんなこと言うんでしょー?新戸くんかなぁ?」
ニヤニヤと楽しそうな微笑を貼り付けてリカが騒ぐ。
好きな人、か。そんな甘ったるい響きは私には不似合いな気がして苦笑する。
人を好きになんかなれるのなら、最初からこんな、誰とも解らない人と寝たりしない。
『新戸くんに告白されたの』
リカの言葉で初めて思い出し、また後ろめたいような苦い思いが広がった。
「え!ほんと?…やだ、見かけによらず(やるわね、あの子)」
『うん。でも、どうしたらいいかわからないの』
「嫌いじゃないんでしょ?」
『そうだけど…』
「なら付き合っちゃえばいいじゃない」
パン、と私の肩をはたくリカ――軽い。
リカのサバサバしたところは好きだけれど、たまに心配になる。
リカ、本当に、心から人を愛したことがある?
『付き合うなんて、むり』
「どうしてよ…。恋愛干物フウにしたらチャンスかもしれないわよ?」
『…むり。』
「そんなに嫌いなんだ」
『そうじゃなくて…』
だって、私に恋愛をする価値なんて、ないもの。
また、また誰かを傷つけちゃうもん。