forget-me-not
パコーン パコーン
行くあてもないので2人組のあとをついてふらふらと道を曲がる。
パコーン パコーン
そうすると音の正体はすぐに判明した。テニスコートがあるのだ。
(…ふぅん、ここにあったんだ)
ちらりと視線を横にやれば先程の女の子たちがフェンスにしがみついていた。
「やっぱかっこいいんだけど」
「ふわふわ王子って感じだよね。目とかくりくりだし。でも草食っぽい」
「え、でもああいう人が豹変したりするの萌えない~?」
(…ふわふわ王子?目がくりくり?)
ぽふ、と新戸くんの顔が浮かんでテニスコート内に目を走らせる。
「フィフティーラブ」
「新戸手ぇ抜けー!」
手前から2番目のコートで試合をしているのは紛れもなく……
『あ、新戸くんだ』
対戦相手の男の子に「強すぎんだよこのヤロー。お前見かけによらず、みてくれ詐欺かよ、ふざけんなよ」
なんてからかわれて、ニィっと白い歯を悪戯そうに見せながらコートを駆け回っている。