forget-me-not
(…テニスなんかやるんだ)
知らなかった彼の姿を前にして、足裏は無条件にフェンスのそばへ引き寄せられる。
薄青色のフェンスの網目から、彼の走り回る姿がみえた。
返されたボールを的確な角度で跳ね返し、相手の死角へ打ち込むその姿は、素人目でみても完璧。
『上手……』
思わず口からでた私の小さな呟きを追うように、見物人から歓声があがる。
その殆どが甲高い女の子のものだったが。