forget-me-not
『いいよ。や、私こそ…「いいんだ」
明らかに彼を好き勝手振り回してきたのは私なのだから避けたって当然なのに、この期に及んで謝ったりする優しい新戸くん。
申し訳なさを前面に押し出してこちらも謝罪をしようと思いきや、些かに強めの語調で遮られた。
『え、?』
「先輩の気持ちなんて分かり切ってるのに、だから今までだって…、なにも見返りなんて求めてなかった。
ただ傍に居られればそれで……。なのに、」
そこで一旦言葉を切った新戸くんは唇を噛み締めて、普段の彼らしくない苦悶の表情をうかべた。
「なのに俺……、勝手な気持ち押し付けて、拗ねてさ、ガキみたい」
カシャン。情けなくフェンスを揺らして微かに頬を赤く染めた新戸くんは
「情けな……」
ポツリ、呟いた。
(…か、可愛い)
彼の真剣な態度をみてそんな風に思ったことは、内緒にしておこう。