forget-me-not







確かに許可もなく、完全に気まぐれでふらりと観戦してしまった。

迷惑だと思うのも当然か、と。些か申し訳なくなって前にだした足の先を眺める。

それにしても、どこに向かっているのかもわからないのに、2人して敷地内を横に並んで歩いているけれど、大丈夫なのだろうか。




「ドキドキしました」

『………。』


結局、自販機とベンチの置いてあるラウンジへの曲がり角へさしかかったころ、新戸くんがいきなり。

そう、いきなりもいきなり、唐突にそんな言葉を発するものだから、脈絡が掴めずに返す言葉に戸惑った。




『な、にが?』


テニスという通常より膨大な運動量を必要とするスポーツ。

多少の心拍数の増加は仕方ないわけだから、それによる結果かと、頭の端で推測して訊き返した。




「迷惑なんかじゃ、ないってことですよ」

『あぁ、まだその話続いてたんだ?』

「……」

『心臓、大丈夫?』


新戸くんが立ち止まったので、具合が悪いのではないかと気になって、なるべく労るように声をかけた。










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