forget-me-not







「だって、いつも、それ片手に会議室くるじゃないですか」


フッ、と口端を緩めて新戸くんが微笑む。

私もなるほど、と何度か頷いて、手渡されたひんやり冷たい缶を受け取った。




『新戸くん、顔のわりに、いつもブラックだよね』

「なんですか、それ」

『だって甘顔じゃん』

「うるさいなぁ、もう」


今日も迷わずブラックコーヒーのボタンを押した彼の横でちょっとからかうと、珍しく鬱陶しそうな表情をみせる。



(…苦そ、)



それはもちろん、この年になっても私には飲めない飲み物だ。










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