forget-me-not
『新戸く…、なんで、』
「言ったでしょ?いつだって先輩を抱きしめる、って」
そういって私の頭にキスをするように顔を擦り寄せながら、愛おしいとすら感じさせる優しい包容はさらに深まった。
性格が、こんなところにまで表れる。
強引だけれど優しくて、端からみたら新戸くんにこんな風に思われるって凄く、贅沢なことなのかもしれない。
「待ってるって言ったのに、いつも急ぎすぎてるのかな、俺」
ふわりと香る、新戸くんの匂い。香水なのかどうかさえ定かではないほど、淡く主張しない甘いそれ。
(…こんな香り、してたっけ)
「でも、先輩と居ると、自分のものにしたくてたまらなくなるんです」
息の混じる声でそう言葉を紡ぎながら、髪をまさぐられ、左耳が外気にさらされるのも束の間――――
(…っ、)
『……あっ、』
新戸くんの口許はそちらに移動していき、耳をカプリとくわえられた。