forget-me-not
「ねぇ、先輩、」
『え、』
「俺だって一応、男の子なんですヨ?」
フフ、と口許を緩めて、悪戯そうに微笑む新戸くん。
語尾を高めにして、動揺する私の反応を伺って、面白がっているようにもみえる。
『そんなの、』
「知ってました?」
『だけど……、だからって、』
普段は意識していない部分を、唐突に前面に押し出されても、私は戸惑うことしかできないというのに。
「しかも俺は先輩に、凄く惹かれてます」
『、』
「そう考えたら、今してることって、ごく自然じゃない?」
ス、と私の頬を指でなぞらえながら、新戸くんが穏やかに問いかける。
その指は白くて、細くて、長くて。テニスのグリップを力強く握っていたそれとは繋がらない。
(………、)
私はその優しい指先が肌を伝うのを感じながら、どうしてか振り払うことができなくて。
ただただ瞬きを繰り返し、新戸くんの顔を見上げる。