forget-me-not







(…………!)




『あ…………』


ドクン、と。激しく打つ私の心臓。

咄嗟に口から乾いた声が漏れる。




「先輩?」


私の不自然な表情の変化を不審に思った新戸くんはそう問いかけると、私の視線の先をたどる。











『夜、くん……』


新戸くんの向こうに私が見たもの、それは彼だった。

いつの間に居たのだろう。校舎の壁に寄り添いながら、普段通り氷のように冷たい目でこちらを見ていた。

虚ろにも見えるはずの感情を伴わない青いそれは、鋭く、こちらを射抜く。

私の心境まで見破られるのではないかと、ゴクリ、生唾を飲む。




「あ、あの人。こないだの……ガイジンさん?」


新戸くんがこちらに向き直り、緩やかにそう訊き返す。

そうしている間にも、夜くんは微塵も動く気配をみせない。



(…なによ、目が合ったんだから、ちょっとは表情変えるとか)



「先輩?」

『え、あぁ……』



(…だいたいいつから居たの?)



――いつから、何を、見てた?










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