forget-me-not







『あ、』


チョコレート。

まるでワタシを買って、とでもいうように、チロルチョコが2つだけ、棚にのってこちらを見ていた。



(…食べたいなー)



疲れたときはチョコ。それが効果覿面であることを知っていた私は、何の迷いもなくその2つを鷲掴む。

それでもう満足してしまって、ミネラルウォーターと一緒に早々とレジへ直行した。




「216円になります」


最近しょぼいものしか買ってないなぁ、なんて自嘲気味に小銭をだして吐息をはいた。












軽いコンビニ袋を指先に引っさげながら、プラプラとマンションを目指した。

『袋、いいです』とかいう程、エコに長けた人間じゃなかった。



(…そういえば、)



夜くんは何か食べたりするのかな?

ふと、そんな単純な疑問が浮かび上がって、彼の澄ました顔が脳裏にちらつく。


見られた、見られた。

何故そんなにそれが気になってしまうのか、理解できない。

立ち尽くすことしかできなかった。あの動じない眼差しに、酷く違和感をおぼえた。


どうして、私をミナイノ?


冷たい瞳が怖かった。



悲しかった。










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