forget-me-not
『もう、いいや。なんか疲れた…』
上着とストールを首から取ってぞんざいにテーブルに置く。
『あー。』と目を細めてうんざりしながら少し髪を乱して、買ったばかりのミネラルウォーターを開けた。
『で、なぁに?』
「何が?」
『何の用があって、人様の部屋に勝手に上がりこんでるの?って訊いてるんだけど』
「そう、初耳」
……こいつ、いけしゃあしゃあと。ギリ、歯ぎしりしたい衝動を抑え込む。
「僕がここにきたかったから、そうした。それ以外ないでしょ」
そんな事もわからないの?とでも言いたげにしれ、と視線を外して済ました顔をする。
あぁそうだった。夜くんとは殆ど普通の会話が成り立たない。
『今日、さ…』
パチリ。
ようやく電気をつけて暖房をいれたあと、遠慮がちに夜くんの反応を窺う。
『今日、みてた?』