forget-me-not







『何で盗み見なんかしたの…』

「僕に見られたら困るの?」

『それは……』


その点に関しては自分でも、うまく理解できないところだ。

何処で誰と何をしていたところを、夜くんに目撃されたからといって、さして支障はないはず、なのに。



〈ヤキモチじゃあない?〉



リカの言葉がふいに浮かびあがる。

ヤキモチ?冗談じゃないよ。

夜くんがヤキモチ妬くとでも思っていたのなら、それは素晴らしい自惚れだ。烏滸がましいにも程がある。



第一夜くんはヤキモチどころか、表情ひとつ変えずに去って行ったし、あんなに冷めた紺碧の瞳をしていて…今だって…




「――ねぇ」


ハ、と気づくと目の前わずか10センチ程度のところで、夜くんはまじまじと私の顔を覗き込んでいた。










< 138 / 275 >

この作品をシェア

pagetop