forget-me-not
『何で盗み見なんかしたの…』
「僕に見られたら困るの?」
『それは……』
その点に関しては自分でも、うまく理解できないところだ。
何処で誰と何をしていたところを、夜くんに目撃されたからといって、さして支障はないはず、なのに。
〈ヤキモチじゃあない?〉
リカの言葉がふいに浮かびあがる。
ヤキモチ?冗談じゃないよ。
夜くんがヤキモチ妬くとでも思っていたのなら、それは素晴らしい自惚れだ。烏滸がましいにも程がある。
第一夜くんはヤキモチどころか、表情ひとつ変えずに去って行ったし、あんなに冷めた紺碧の瞳をしていて…今だって…
「――ねぇ」
ハ、と気づくと目の前わずか10センチ程度のところで、夜くんはまじまじと私の顔を覗き込んでいた。