forget-me-not
『ちょっと、靴………脱いでよ』
何か言わなくてはと、咄嗟に口を開いた。
こんな状況にも関わらず、有無をいわさずドキドキと高鳴りだした心臓は何かに対する本能的な警戒態勢だろうか。
「………」
それでも何も言わない夜くん。
私ばかりどぎまぎしているのに嫌気がさして、眉根を寄せ、今度こそ深く俯いた。
と、
スルリと手の甲で頬を撫でられる。ひやりと冷たいそれに驚いていれば突如、顎を優しく上向かされて、一言。
「フウはなにをそんなに脅えているの?」
私は何に脅えていたの?
その真っ直ぐな視線から目を逸らしたくても、顎を固定されているせいで、思うようにいかない。
『…だ、って』
だって、
『だって幻滅、したでしょう?』
所詮、そんな女なのかと。