forget-me-not
「………何に?」
こてん、と首を傾げた夜くんは、私が言った言葉に驚いているようにも見えた。
『だって私…、軽い女だと思われたかなって。でも…』
「ネェ、何か勘違いしてない?」
パッと私の顎から手を離して、夜くんが溜め息をはく。
「フウが軽くたって重くたって、僕はそんなことに興味はない」
『…………、』
「だいたいこの世界に、そのくらいの人間は腐るほどいるじゃないか。キミに限ったことじゃない」
『でも…、』
滑らかに、滑るように。夜くんは何の感情も込めずに、淡々とただあることを語る。
そうなのだ、私自身が一番後ろめたかった。それはその行為に対してではなく―――
神谷の存在を、そういう時間を利用して埋めていたことに対して、だ。