forget-me-not







「………何に?」


こてん、と首を傾げた夜くんは、私が言った言葉に驚いているようにも見えた。



『だって私…、軽い女だと思われたかなって。でも…』

「ネェ、何か勘違いしてない?」


パッと私の顎から手を離して、夜くんが溜め息をはく。




「フウが軽くたって重くたって、僕はそんなことに興味はない」

『…………、』

「だいたいこの世界に、そのくらいの人間は腐るほどいるじゃないか。キミに限ったことじゃない」

『でも…、』


滑らかに、滑るように。夜くんは何の感情も込めずに、淡々とただあることを語る。

そうなのだ、私自身が一番後ろめたかった。それはその行為に対してではなく―――



神谷の存在を、そういう時間を利用して埋めていたことに対して、だ。










< 146 / 275 >

この作品をシェア

pagetop