forget-me-not
神谷を忘れたかった、でも埋めようとすればするほどに、苦しかった。
時が過ぎるに比例して、私はどんどん汚れていった。人を、愛することができなくなっていった。
出会う前に戻れたのなら、そう、例えばあの森の少年と無邪気に遊んでいたあの頃のような、清々しい自分へ。
『――――…わ、!』
これでもかと言うほどに眉を寄せて思い詰めていた私の視界に、天井が映る。
背中越しに伝わる柔らかな感触、ソファだ。そして天井より少し手前、そこに映るのは夜くんの―――…
(…夜くんの顔?!)
「――――もっと、面白いものみせてよ」
『…は、?』
「つまらないって事」
『はい…、?』
「例えば今、僕がまたキミにこうしたら、フウはどう感じる?」
前触れもなく押し倒されるという急展開に、思考が暴走しそうになるのを制御しようと試みるも追いつかず…、
迫り来るその赤い唇が、目を瞑る瞬間、薄く笑ったような気がした。