forget-me-not
「恋愛はしたくない。それはあの人を忘れられないキミにとって、傷の舐めあいになるってわかってるからでしょ」
夜くんはさきほど言ったことを分析するように、私を眺めながら続ける。
「でも、寂しさを埋める都合のいい相手はほしい」
首からそっと、右手が離れる。
「たとえそれが、自分に好意をもっている相手でも利用してしまうんだろうね」
さらり、そう言われた拍子にハッと頭に浮かぶ顔は
『…新、戸くん?』
私が彼を利用した?
そんなわけない。彼を傷つけたくないから、半端な気持ちで付き合ったりもしたくないってだけで…
「彼を傷つけまいとしてとっている行動も、結局自分のためだよね?」
ずきん、ちょうど考えていた部分を、見透かすようにつかれた。