forget-me-not
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―――10年前
『…おまえ、捨てられちゃったの?』
小学校の帰り道、黒い捨て猫を見つけた。
『どうして、こんなに可愛いのに捨てたりするのかなぁ』
クロと名付けたその子猫に、毎日餌を遣りに来ては、その美しい毛並みを撫でていた。
『…いい子』
ミルクを上品に飲んでは、しれ、と澄まし顔のクロ。
艶のある美しすぎるそれは、捨て猫とは思えなかった。
私は幼いながらに、どこかのお金持ちが飼っていたのかな、なんて、思っていて…
『…クロ』
だから驚いた。
低木の下からクロにそっくりの黒猫が這い出してきた時。
その瞳は一度見たら忘れられない程、濃く、濃く、深いブルー。
『クロ…』
確かクロの瞳は…
『――キミが忘れた頃にまた、戻ってくるよ』