forget-me-not
『ねぇ、夜くん』
だから、聞いてはいけないことを
『ひとつ、聞いてもいい?』
聞いてしまいたくなるじゃないか。
『――私のこと、好き?』
声にだしてはみたものの、想像以上にそれは陳腐で、背筋がゾクリとした。
夜くんは私の目を交互に見つめ、口を開いた。
何かを言おうとして。
けれど、眉をクツリと寄せて口を閉じた。
(……)
そんな躊躇いがちな表情、今まで見たことがなくて、見れて嬉しいはずなのに、胸が締め付けられた。
それを見ただけで、答えがわかってしまうから。
――きっと愛してなんか、いないって。
「僕は、……友達も、家族も、恋人も、いたことがなかった」
私の肩からするりと両手を降ろし、俯いた。
「だから少し、混乱してる」
あぁ、素直な正直さって、こんなに毒をもってるんだ。
嘘で愛を囁かれるより、戸惑いを口にされるほうがよっぽど辛いと思った。