forget-me-not
―――ピピピピピピ
ピッ。
「っ、う、あー…」
目覚ましのけたたましい音で、深く沈んでいた私の思考は引き上げられる。
夢、だ。
(…久しぶりにクロの夢、みた)
「…んーー」
寝覚めが悪い。頭がボゥ、として未だ夢が抜けきらない。
焦点合わずに見つめた天井にぐるぐると彷徨う、過去の映像。
「黒川、夜…」
寝ぼけながらに意味もなく、浮かんだそれを呟いてしまった私は…
―――既に彼の術中に嵌ってしまっていたんだろうか
『おはよ…』
「おはよ、じゃないわよ、フウ!!!」
(…あぁ、怠い)
寝不足なうえに朝からリカの甲高い声で猛攻がかかる。
なんだって朝からそんなに元気なんだろう、と。
朝一番から整って血色の良い顔をしたリカと向き合った。
『…なにぃ』
「昨日、何度も電話したのに、何で出ないのよぉー」
あぁ、バイトで昨日は疲れていて電源を切れたままに眠ってしまったのだ。
慌てて画面を開くと――着信6件。
『ゴメン、リカ。どしたの?』
「もうー、折角良いこと教えたげよーと思ったのに、知らないからぁ」
プイ、と。綺麗に巻いた髪をふんわり揺らして立ち去るリカ。
(…ごめんって)
そんな、怒るなよ。なんて言いたくなる私は、リカの彼氏か何かだろうか。