forget-me-not







(………………っ!)






ボト、ボト、とフロントガラスにあたる雨粒の音がする。

ウィー、ウィー、とワイパーの微かな音が聞こえるくらいに車内は静謐だ。




『……』

「……」


濡れた香りがする。雨が乾く、匂い。

掴まれた手首が、熱い。








「すきです」


離された唇、それが発したのは、


「いい加減、楽になってよ」


解放なのか、妥協なのか。




『……』


突然すぎるそれに、固まったまま動けないでいた。

思った通りやらわかなきキスは、彼の飲んでいたイチゴの味がした。









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