forget-me-not






『…あ、あぉ、青だ…よ、』


じ、と見つめられ、お互いの心音が聴こえそうなほど静かな空気を必死に破る。

はぁ、と息をはいた新戸くんは仕方ないな、と笑って手首を離し、ハンドルへ戻した。




「俺と付き合ってくれたら、絶対に悲しい思いはさせないよー」


語尾を伸ばして、ちょっとだけおどけてみせる。

正面に顔を向けながら、彼の片手がさりげなく私の手を握った。



(…どうし、よ、)



優しくされると、やっぱり逃げたくなる。

だけど、それじゃあ今までと同じだ。

この空間は心地いい。それは本当に、私にはもったいないくらい。




――好きじゃないなら、期待させるようなことしないでやってくれ




泉月さんの声が響く。


夜くんは、もういない。






そろそろ、誰かの期待に応えて、やり直すときかもしれない。







この手を握り返せば、それができる。





――全部、うまくいくのかな













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