forget-me-not
「フウの名前だしたら、それまで一度もこっち見なかったのに………キャー!」
バン、バン、と。私の肩を叩いては悶絶し始めるリカ。
なんでこんななのにモテるのかと訝しみたくなる。
「あの人スッゴい、のよ!」
『、何が?』
「目、目、目ぇがぁ~…!」
ハートマーク付きで悲鳴をあげながら両手で顔を覆う。
目、か。私が対面した黒川 夜なんだとしたら、確かにあの「あお」には抗えないものがある。
良い意味でも悪い意味でも、常人ならおののいてしまうような、ソレ。
「せっかく話が少し進展したから、そっからフウの話題でどんどん広げたのぉ」
『…も、ぅ』
「そーゆーことだから、フウ。私のためにも黒川夜くんと仲良くなってよねー!」
フウが上手くやったら3人で飲み行くよ、なんて相変わらず叫びながら笑顔満開のリカ。
普段はもう少しクールな彼女がここまで頑張っている。
稀に見る、獲物、なんだろう。
(…えー、そんなぁ)
一方私としては心中複雑。
あの二、三言の僅かな会話でさえ足が竦むようで…。
人間離れした圧倒的な魅力の中に確実に感じた、恐怖。
それとまた対峙する勇気は正直なかった。