forget-me-not







***







―――‘久しぶりだね、雨嶺 風’




黒川 夜からそんな唐突な電話がかかってきた23時。

私は震える手で携帯を握った。




‘だ、れ…’

‘また今度、って言ったでしょ’

‘……っ、’


アイツ、だ。間違いない。

また、今度――なんて、フワリ、艶やかに長い睫毛を伏せて後ろを向いて去った、あの男。

じゃあ講義室の入り口から私を見上げていたのも…



(…錯覚じゃ、ない?)




‘元気に、していた?’

‘…誰!’

‘、’


もう解っている癖に、叫ぶように問いかけた。
          
名前じゃない、お前は「ダレ」なんだ、と。




‘黒川、夜’


彼は少し黙ったあと、何の情動も感じられない無機質な声でそう言った。




‘…何の用?’

‘、’


黒川 夜はまた黙る。

その束の間の間でさえ、恐くなる。



(…抵抗できなく、なりそうで)



馬鹿らしい。何に、抵抗するっていうんだろうか。




‘キミに、手伝って欲しいんだ’

‘、何を?’


そう訊けばまた黙する黒川 夜。

どうして私なんかに、何を、あなたは誰で、何者…?




‘また、明日’


―――……ツー、ツー、ツー



切れ、た。















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