forget-me-not
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『――何?』
第一声。未だ、警戒顕わに。
公園の木に凭れて瞼を閉じるその姿に話しかける。
「、」
だが彼は何も言わずそのまま両腕を組み目を閉じて、表情ひとつ、変えない。
(…なんなの)
辺りは真っ暗で街灯の光だけがその端正な横顔を照らす。
それは暗闇でも分かるほど、透き通るように美麗な白だ。
閉じられたそこに映える長い漆黒の睫毛も、現世離れしているようで。
『ねぇ、』
沈黙に耐えられず、否、その無言の美しさに当てられるのが苦痛になったのか、もう一度呼びかける。
「、」
と、その瞳はゆっくりと開かれ、ブレずに私を捉えた。
隠されていた硝子のような蒼色を真正面にくらう。
『…な、なによ』
黙したままジ、と見つめられるのは辛い。
その瞳の圧力は凄まじく、決して熱がこもるような暑苦しいそれではないのに。
むしろ冷淡なくらい冷ややかであるのに、ただならぬ重圧感。