forget-me-not
「雨嶺 風」
彼は木に凭れたその姿勢のまま首だけを私のほうへ向けて言った。
「キミに、手伝ってほしい」
ゆらり、木から離れ私に近づく。
彼のその表情は怖くはなかったけれど、やはり、
(…神々、しい?)
馬鹿げてる。同い年の男の子を神々しいと思うなんて。
ちょっと顔が綺麗(いや整いすぎていて)で瞳が硝子のようで…。
冷ややかだが温かく、悪魔のようにも天使のようにも見えて…
(…やだ、私。考えてることマトモじゃない、)
『何を手伝うの?』
「一緒に居てくれれば、自然とわかるよ」
そう言った黒川夜は細長い右手をゆるり、差し出す。
(…ん?)
『なに?』
「、」
無言のまま右手を宙に浮かす。まるで、そう、握手をするように。
『もしかして…、握手?』
「そうだよ。人はみんなこうするでしょ?」