forget-me-not
「それと、言っておくけど…
僕は、この世界の人間じゃ、ないから」
(…ハ?)
リカが昼間に言っていた言葉を思い出す。本当だった、なんて。
『…じゃないなら、何なの?宇宙人?』
「それも少し違うかな」
少し…?じゃあ大方当たってるわけですか。
リカがヴァンパイアかなんて冗談言ったときも、たしか…
「僕を何だと思ったっていいけど、多分キミの想像上では当たらないよ」
『…ふぅん。リカにヴァンパイアでもいいよって言った?』
「あぁ。それは嘘じゃない」
(…ハ?)
「正確に言えば、それに近いものにも、なろうと思えばなれるよ」
黒川夜はハァ、と色気たっぷりに吐息を吐いて面倒臭そうに横をみた。
「何にだって、なれるから」
―――シーン、と。
私たちの間に嫌な間が空いた。
多分彼はいま私を見下ろしている。気配でわかる。
けれどその眼光に当てられたくない私は、もうそれを直視することをやめていた。
「まずひとつめ」
そんな私にお構いなしに玲瓏な声が暗闇に響いた。
「――“恋愛”というものが、知りたい」