forget-me-not
あの日から3年が過ぎ去ったいま、記憶は確実に薄れていくことを実感させられると同時に、驚くほど鮮明に残るものもあるんだと教えられた気がする。
例えば。
あなたの私の肩に触れた手。
一度だけみせた笑顔。
腕を回したときの、あなたの、冷たいけれど温かい腕。
(…永遠にずっと、消えないのかな)
「それも迷惑な話…」
歩道橋を曲がって横にそれると、都会に馴染みない大きな公園が広がる。
――サクリ
いつの間にかジミーチュウの奏でる音も完全に柔らかいそれに変わり、足裏からは心地よい土の温もり。
(…あぁ)
此処で。
私がこうして湖の縁のベンチに腰掛けていると…
あなたはふいに現れたよね。
「、」
ゆっくりとそのベンチに歩み寄り、3年前と同じように腰掛ける。
眺めは以前と全く変わらず、寒空の下の湖と、生い茂る木々。