forget-me-not
「ゴメン、ネ?」
先程から口をきかない私に、夜くんは悪びれた様子なく謝る。
さっきまでは謝 り も し な か っ た
―――嫌だったの?、そう
そう言って澄ました顔をしていた。
(…寄りによって何で、私)
私はもう恋愛をしないって決めたのに。だからこういう事も――変な情は持ちたくないのに。
『何で、キスなんか…』
「どんな風かと思って」
『そもそもあなたに恋なんてしないから』
「……。
――そんなこと、言ってないけど」
フイ、と顔を逸らして置いておいたミネラルウォーターを勝手に飲む夜くん。
(…………!)
頭にきた――こんなの、私が勝手に自惚れたみたいじゃない。
私が恋するところがみたいなんて言っておいて、その直後にキスするなんて思わせぶりもいいところ。
(…べ、別に期待してたとかいうわけじゃ、)
そんなことは、ない。
瞳が綺麗で艶やかな囁きに、ドキドキなんかけして…決して…
(…決して、してない)
うあー、と唸り声を漏らしながら両手で頭を掻き毟る私は、夜くんの冷ややかな眼差しに気づかないでいた。
「…頭、グシャグシャ」
『……』
「脳内もグシャグシャになってるだろ」
『……』
「ねぇ、コレ不味い」