forget-me-not
突如、視界に入り込んだグレーのスーツは目の前で爽やかに笑って、茶色がかった髪を揺らした。
―――モテる、人だ。
一目で、それがわかった。
新戸くんのように人工的に染めた薄茶ではなく、自然な色のその髪、ブレない笑顔。
それも、口の片端だけを少し歪めた特徴あるそれは…
この人の容姿の良さを充分に引き立てていた。
(…ふぅん、)
第一印象は、そんな感じ。
「い、泉月(いつき)くん!」
しどろもどろしながら、新戸くんが叫ぶ。
ふぅん、泉月っていうのか、この人。
人様の告白を邪魔しておいて、悪びれもなく爽快な笑顔なんか貼り付けちゃって。
告白されても、答えに困るのは解っているから結果的に助かったのに、そんなことを勝手に思う私。
(…嘘くさい、笑顔だなー)
「こら、葉。名前で呼ぶな」
「ごめんごめん、星せんせ、」
にひひ、と悪戯そうに笑う新戸くんの頭をグレーのスーツはパシリ叩く。