それはまるで粉雪のように

―帰り道―

―帰り道―

「担任の先生、優しそうな方でしたね」

みさきが美帆と汐見に言う。

「米原先生……だったけ?小柄な先生だったね。」

汐見が答える。一方、美帆は、

「…………」

だんまりしていた。

「どうかされたのですか、岡本さん?気分でも悪いのですか?」

みさきは心配そうに美帆の顔を覗き込む。しかし汐見は全く気にしない様子で笑いながら言った。

「大丈夫よ。美帆は、担任の先生があの教科の担当だから硬直してるのよ」

「あの教科……?」

「あの教科よ、あの教科。」

「えっと米原先生の自己紹介によると……」

「化学専門……」

みさきに美帆が、耳をたてないと聞こえないくらいボソッと言った。

「か、化学ですよ……ね?」

みさきは美帆の雰囲気に押されながら、気弱な声で汐見に聞いた。

「そうよ、化学よ。ねえ美帆、化学とは美帆にとって何なのかしら?」

汐見が意地悪そうに、美帆に聞いた。それに美帆は真剣な顔つきで言った。

「化学……だけじゃない。理数系科目全て、わたしにとってとてつもない高さの壁……そうね、大体高さ20メートル、厚さ15センチメートルもの大きな壁だと思う……」

また大きさが変わったわ……と汐見、それはスゴいですね……とみさき。ふたりとも思い浮かんだ言葉は違ったが、語尾が苦笑気味だったのは違わなかった。
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