それはまるで粉雪のように
「……ハッ……ハッ……」

時を同じくしてまた1人、帰宅途中の生徒がいる。

「……ハァ……」

その生徒は健二と違って、きちんと傘を挿して歩いている。いや、つい先までは全力で走っていた。

「……ハァ……」

軽く濡れているセーラー服から漏れた溜め息。それは先の疾走の息遣いの荒さではなく、出来事に対する限りない後悔。

「…………」

雨粒が跳ね返る路面を見ながら、ゆっくりと歩を進める。

『……あの人の近くにいればいいんだ!!』

自分が吐いたコトバが、何度も何度も頭の中をよぎる。

「……なんであんなこと……言っちゃったんだろ……」

彼女の名前は、岡本美帆。逆瀬高校に通う高校生。

「……なんで……」

また、1人の男子に恋心を抱く、普通の女の子。

「…………」

その目からは、一筋の涙が滴り落ちた。「…………」

そのことを誰にも知られたくなかった美帆。

「早く家に帰ろ……」

家に向かって走り出した。
その走りは先ほど速くはなくはなかったが、気持ちは先よりも重かった。
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