それはまるで粉雪のように
―1年5組教室―

「なあ、谷口」

健二が声をかけた相手、谷口は机に突っ伏している。

「どうしたんだ?お前が珍しいな……何かあったのか?」

「御影、お前は気楽で良いな……」

「何が?」

谷口は真剣な眼差しで言った。健二には気楽と言われるに値する節がない。

「この後の化学の小テスト」

「あぁ……それがどうしたか?」

「『それがどうした?』だと?化学が得意なやつは良いよな」

谷口はまた机に突っ伏した。

……何なんだ?
健二は未だに谷口が暗い理由が分からない。が、少し連想ゲームでもしてみよう。谷口……化学……小テスト……あぁなるほど。

一瞬にしてひとつの答えに辿り着く健二であった。

「なあ、谷口、お前まさかテスト勉強してないんじゃないか?」

「ああ、昨日は夜中までテレビを見てたから、テスト勉強出来なかったんだ」

「なるほど、そんなことか」

納得したのは健二ではない。

「……またか」

「む……またかとはなんだ、我が親愛なる御影健二よ!!」

口を挟んだのは平林であった。どこでも必ず健二の近くにいるのが彼、平林の特性なのだった。
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