それはまるで粉雪のように
「尾崎先生、プリント届けにきました。」
健二は職員室内の尾崎教諭を呼んだ。
「あぁ、御影か。こっちに持ってきてくれ〜」
尾崎教諭は健二を自分の席に呼び寄せた。尾崎教諭の席は職員室の中でも窓側の端にあり、生徒がそこへ行く時はたくさんの教師とすれ違わなければならないので、かなりの時間がかかるのだ。
「あ、はい!……よいしょっと……」
もちろん健二も尾崎教諭の席へ行くのにも苦労する。と、そこへ
「お、御影か……ちょっといいか?」
健二の右脇の席に座っていた米原教師から声がかかった。
「あ、はい……えっと……なんでしょうか?」
「さっきの小テストの答え合わせをしていたのだ。」
「はぁ……」
健二はチラッと尾崎教諭を見た。幸い、尾崎教諭は内線がかかっていてそれの応対に忙しそうだったので、健二は心置きなく米原教諭と話せるのだ。それを米原教諭も感じ取ったのか、尾崎教諭に『御影を借りるぞ』といいいたげなジェスチャーを尾崎教諭に送った。
「で、聞きたいことがひとつあるのだ。」
「なんでしょう?」
「谷口のコトなのだが……」
「はぁ……おっと」
またか……とすぐにでも口に出したくなった健二だったが、そこは溜め息で抑えれたことに安堵を覚える健二であった。ちなみに米原教諭の座席は職員室のちょうど真ん中に位置する。たくさんの教師が健二を邪魔そうに避けて職員室出口に向かっていくのであった。
「御影、そこにいては他の先生方に邪魔だ。もっと近づけ。」
「あ、はい。」
健二は米原教諭の真横に立った。念のため、手に持っていたプリント(平林のたくらみともいう)を自分の後ろに隠した。