それはまるで粉雪のように
「いえ、特には……」
健二は怪訝な顔をする尾崎教諭を見た。何故、先生は平林の書いたちっぽけな紙切れ―意味不明な文字配列と共にある―を見ただけでそんな顔をせねばならないのか。健二には全く分からなかった。
しばらくすると、尾崎教諭はある一点をじっと見つめ、そして紙切れを見、次第に顔に笑顔が戻ってきた。
「あの、先生?どうかしまし」
「いやはや!!さすが平林だ!!」
健二が尾崎教諭の顔色の変化の理由を尋ねようとしたが、尾崎教諭が出した感嘆の声にかき消されてしまった。
「御影、こいつを平林に渡しておいてくれ。あと平林に『つまらんことせずに真っ向を貫け』と伝えてくれ」
「は、はぁ……」
そうして健二は尾崎教諭の顔色の変化の理由が分からず終いで職員室を後にした。右手に預かったプリント―平林のと違って上質紙―を持って。