先生、私じゃダメですか?
「あー肩こっちゃったぁ。」
授業が終わったあと、ミホが私の所にきてぐーっと伸びをして言った。
「やっぱりみんな緊張してたよねー。」
ミホは私の前の席に座ってこちらを向いている。人の席なのにいいのかなぁと心配する私をよそに、なんだかミホは眠たそうだ。
「寝不足?」
さりげなく聞くと、
「あー…昨日健と、遅くまで電話しててね…」
と、ちょっと顔を赤くして言った。
健とは、ミホの彼氏。中学の時から付き合っていて、今は別々の学校に通っている。
同学年だったけど、同じクラスではなかったから、私はあまりどんな人なのかは知らない。でも幸せそうなミホを見ると、きっといい人なんだろう。
その時、ミホが座る席の男子がやってきた。
「赤木さん、ちょっと物とりたいんだけど…」
「あぁ、ごめんね~」
私はそれを見て、少し驚いてしまった。
この男子はもう、ミホの名前を覚えているんだ…。
二人の自然なやり取りを、ただ呆然と私は見ていた。