先生、私じゃダメですか?
なんとか校門前までついた。
もうかなりギリギリで、他に生徒らしき人はいないけれど、とりあえず大丈夫だろう。
校門から玄関までの道には、両脇に桜が植えてあり、美しい桜並木となっていた。のんびり歩いていられないけど、淡い桃色に自然と胸が踊る。
なんとなく華やかな気持ちで玄関に着くと、ある恐ろしい事に気付いてしまった。
「中ズックがない…。」
そうだ。
今朝バタバタして、バックの横に置いてあったズックを忘れてきてしまったのだ。
全身の血が、さー…っと凍りつくのを感じた。今から家に帰ったら、それこそ入学式には間に合わない。
どうしようもなく途方にくれ、じわじわと涙が溢れてきた。
「どうしよう…。」
その時だった。
「どうした?」