先生、私じゃダメですか?


顔をあげると、気付かないうちにスーツを来た男の人が立っていた。30代くらいだろうか?


「あの…先生…ですか…?」

「…そうだけど。」


顔色一つ変えずに私を見る。
なんだろう…この人怖い!!


「すみません…私ズック忘れちゃって…」

「お前、一年生?」


小さくこくんとうなずくと、その人はため息をもらした。


嘘…。もしかして怒られる!?


反射的に身を小さくすると、意外な言葉が降ってきた。


「俺のケータイ貸すから、母さんに電話しな。」

「えっ?」


目の前には、この先生の物であろう、青いケータイがあった。


でも……


「ごめんなさい…。私、母はいないんです。父は仕事だし、家には誰もいなくて…」


最悪だと思った。
せっかく親切にしてくれたのに、今度こそ怒られるかもしれない…。


「そっか。」


意外にも優しい声だった。すると近くの部屋に行ってしまうと、ただ呆然と立つ私の前にスリッパを出してくれた。


「ちょっとついてきて。」


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