先生、私じゃダメですか?
私の顔を見て、ミホがクスッと笑った。
「やぁっぱり。佳ぬけてるなぁ。」
そう言うと、バックから何枚か紙を出した。
「兄ちゃんの去年の卒アル、コピーしてきたんだ。ちょっと人が変わってるかもしれないけど、探してみな。」
そこには先生方の顔写真が載っていた。
「うわ…さすがミホ!!」
「あなどるなよ、私を。」
さっそく写真に目を落とす。指でなぞりながら一人一人見ていくと、ぱっと指が止まった。
「あっ!!この人…!!」
「どれどれ…?」
ミホも顔を寄せて見る。
「げ!?相野じゃん!!」
突然ミホは顔を歪ませた。
「あいの…先生…?」
「そう!!これ、兄ちゃんが三年の時の担任だったんだけど、めちゃくちゃ怖かったんだよ~!!」
「えっ!?」
「確か27、8歳だったかな?兄ちゃんはいい先生って言ってたけど、家庭訪問の時の相野、めちゃくちゃ怖かったんだから!!」
ミホは相野先生の恐ろしさについて語り始めた。
「私はちらっと見た程度なんだけど、まず目つきが怖くてさぁ。雰囲気もなんか怖くて、いきなりお母さんに、うちの兄ちゃん大学はまず無理だって言い切ったんだから!!」
「へぇー…」
私はミホの話を聞いて、そこまで怖い人ではないんじゃないかと思っていた。
確かに目はちょっと怖かったけど、ケータイ貸そうとしてくれたり、ズックまで用意してくれた。それに顔だって、疲れているようには見えたけど、特別悪いってわけでもなかったし…。
「あ、じゃあ佳、相野の所にズック返しに行かないと!」
「…そうだった!!」
はっと我にかえると、どうやって返そうかと考えた。一人で行くのは心細いし……
「何考えてんのよ!!私も一緒に行くから!!」
「ミホ…!!」
そうして二人で、ズックを返しに職員室へ向かった。