もう会えない君。
「凛、折角だから何処か行こうか?」
「じゃあ着替えてくる」
「俺も。飛びっきりオシャレして来い」
「うん!」
元気よく頷いて私は先に部屋の中に入った。
服装は既に決まっている。
隼に「飛びっきりオシャレして来い」と言われる前から決まっていた。
クローゼットの中に大切に仕舞ってある、未着用の服を手に取る。
自然と泣き顔から笑顔になっていた私はその服を抱き締めた。
そして、その服の下にパフTシャツを着て部屋を出ると丁度、隼も出てきた。
隼は私に視線を向けると嬉しそうに笑った。
この前、隼が私に買ってくれたコンビネゾンを着てる私を見て隼は照れ臭そうに、そして嬉しそうに微笑んだ。
「似合ってる!凛にぴったり!」
そう言って私の髪をくしゃくしゃに撫でて、当たり前のように手を差しだす。
だから私も当たり前のように隼の手に自分の手を重ねる。
一緒にエレベーターに向かい、一緒に乗って一階まで降りた。
外は蒸し暑くて真夏という言葉がお似合いだ。
エアコンの利いた部屋に居た所為か、やけに暑苦しく感じた。
だけど不思議な事に手だけは暑苦しいとは思わなかった。
隼と繋いでいる、この手だけは暑苦しいとは思えなかった。
それは私だけではなく、大切な人が居る人なら当然の事なのかもしれない。