もう会えない君。
「凛っ!?」
ドンドンと玄関のドアを叩きながら聞こえてきたのは悠の声で…。
一週間ぶりに聞く、人の声になぜか安心感を持った。
誰の声も聞きたくなくて逃げた私は人の声を久し振りに聞いた。
「おい、凛!!大丈夫か!?」
扉越しに声を掛けてくれる悠に私は返答出来ないでいた。
隼に会いたい…。
もう一度だけでいいから会いたい。
なんで…別れようなんて言っちゃったのかな。
後悔の波が再び私を襲う。
大粒の涙の滴がフローリングの床に零れ落ちる。
ドアを叩く音が止むと共に足音が遠ざかったように聞こえた。
呆れて帰っちゃったんだと思った。
返事もしない、鍵も開けない、そんな私に呆れたんだと思った。
でも違った。
悠はそんな人じゃなかった。
隼と悠はそんな人じゃなかったんだ。
私が落ち込んでると二人はいつも慰めてくれて。
そんな二人だからこそ、私の中で大きな存在に変わってたんだと思う。
玄関の鍵が開いたのは足音が遠ざかったように聞こえてから約数十分過ぎた頃だった。
ドアが開き、倒れ込んだままの私の元に来てくれたのは…――――悠と皐だった。
隼には会えないの?
来てくれないの…?
私は、他の誰もなく…隼に逢いたかった……。
「大丈夫か!?」
悠の声に弱々しく頷いた。
「凛ちゃん…」
申し訳なさそうに皐が私の名前を呼んだ。
そして綴った言葉は全ての真相だった――。
見えない影が、全ての黒幕だったんだ。