もう会えない君。
「酒井くんって中学の時、モテたでしょ?」
なんとなく聞いてみたかった私は隼に問い掛けた。
隼は「えっ!?」と驚き顔をして首を左右に振った。
「俺、全然、モテなかったよ」
そう言って可愛く微笑んだ。
こんなに可愛い笑顔をする男の子なんて居るのかな?
…なんて思ってしまうほど隼の笑顔は可愛く見えた。
「でも彼女とか居たでしょ?」
隼は寂しそうに笑った。
私の質問には曖昧な答えだけを残して。
階段を上り終え、一番手前の“1-A”と記されたプレートが掲げられてる教室の中に入った。
黒板に一枚のプリント用紙が掲載されている。
そこには一人一人の席順が書かれていて…私と隼の席は結構、離れてしまった。
少し残念に思い、肩を落とすと隣で隼も小さく溜息を吐いた。
「席…離れちゃったね」
隼は残念そうにプリントを眺めながら言った。
折角、知り合って仲良くなれたのに…。
席が隣だったらよかった。
…なんて思ってもプリントの文字は変わらない。
私と隼は指定された席に向かった。
隼は教卓の一番前で私は窓際の一番後ろの席。
眺めが最高の席なんだけど隣は隼じゃない別の人…。
まだ会ってもいない、知らない人。