もう会えない君。
「入学式の説明は…隣の鈴木さんに聞いてね」
視線だけを向ける男の子に先生は言葉を付け足した。
…え?
先生、今、なんて言った?
――“鈴木さんに聞いてね”
聞き間違いなんかじゃない。
どうしよう…
私、先生の話、聞いてないのに…。
ふと男の子の方に視線を向けると丁度、目が合った。
「あ…」
説明した方がいいのか、それとも自分も分からないと正直に言うべきか…
だけど私が悩む必要はなかったらしい。
早瀬悠は私から視線を逸らして怠そうに机に伏せた。
どうやら話を聞く気はないみたい。
一瞬の焦りも一瞬で終わり、私は安堵した。
「それでは体育館に移動して下さい」
担任の言葉と共に生徒達が移動を始める。
徐々に減っていく教室内。
残ったのは私と悠…それから隼の三人だけ。
声を掛けるべきなのだろうか?
それとも黙って移動するべき?
またしても悩みの種が出来てしまった。