チューリップの王子様
馬車の中
目の前にいるのは、忘れもしないあの時の女の子だ
でも、彼女は体を小刻みに震えさせ、警戒心を剥き出しな状態
俺がちょっと動くだけで、大袈裟な反応を示す
人買いに買われ、人市場に出されれば人間不信にもなるよなぁ…
笑顔が可愛い彼女―カノン―
でも、今のカノンに笑顔は無い
あるのは、恐怖に脅えた顔だけ
また、笑って欲しい
どうやったら、俺を信用してくれるかな?
どうしたら、君は笑ってくれる?
俺は、馬車の中
ひたすら頭を悩ませていた
どうか、カノンにあの時の笑顔が戻りますように…
そう、心の中で密かに祈っていると馬車が停まった