チューリップの王子様

空き部屋に入り、一応鍵を閉める

すると、鍵を閉める音を合図にリーノが抱きついてきた


「姉様…カノン…姉様…カノンお姉様ぁぁ…会いたかったよぅ…」


そして、泣きながら私の存在を確認するように、何度も私の名前を呼んだ


「皆、お姉様を知らないって言って…私に、姉なんていないって言って…」


ボロボロと涙を流しながら話すリーノ

私は黙って耳を傾ける


「でも、よかった…やっぱり、お姉様はちゃんと居たよぉぉ…カノンお姉様ぁ」


こんな私を、まだ"お姉様"と呼んでくれるリーノ

でも…


「私は…もう、あなたのお姉様じゃないよ?…私は、あの国には存在して━」


私が言葉を紡いでいると、抱きつくリーノの腕の力が強くなった

< 89 / 214 >

この作品をシェア

pagetop