秘密のMelo♪y④*ウィーン編㊦*
ライバル視される楓くん
―彼女、僕と結婚してくれるそうです…――
「な……」
「まあ…どういうことですの?」
「ええ、やはり顔だけの男よりは、顔も頭も地位も金もある僕の方がよいものと…」
じ……。
「冗っ談じゃない!! 例えこの人が本当に顔だけだったとしても、あなたは絶対お断りだよ! 申し訳ございませんが谷川様、お帰り下さいませ」
つんとして言い放つと、ぽかんとしているかっくんをぐいんと引っ張って連れて入った。
「おお、遅かったね真裕や」
「父様。あたし今回はお仕事できません」
「え? なんで?」
「なんでもさってもあるかこのばか!」
「ええ!? ごめんなさい!」
いんやっ。
とおさまは悪くないっ。謝んなくてよし!
「坂本さん、坂本さんどこ? 着物脱がして!」
「はいはいはいお嬢様、坂本はこちらにございます。どうぞお入りください。脱ぎましょうね」
こっくり頷きながら、かっくんを振り返ることなく部屋に入った。
だってさ…。
不可抗力とはいえ、それこそ顔だけの…てかもう顔すら追いついてないような残念な感じの最低男にキスされたんですよ?
気持ち悪くって気持ち悪くって…。
さらには気まずくって気まずくって…。
「ハア……」
ああ…もう泣きたい…。
泣いた気もするけど…。
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