秘密のMelo♪y④*ウィーン編㊦*
「嫌そうだな」
「バイオリンが嫌なわけじゃないけどさー…」
てかこの人なんで楽器持ってないの?
あれ、その気なし? なしですか?
…あ、あった。
…え? どこに隠してたの…?
「隠してねぇし」
「じゃ今どっから出てきたの…?」
「普通に横に置いてただろ」
「…?」
置いて……ましたっけね?
そうでしたっけね?
しきりに首を傾げるあたしが、必死に両手で抱え込むバイオリンケースもひょいっと持ち上げて、かっくんはあたしの手を引いた。
「あ、野木さんありがとう。またあとでね」
「頑張ってください」
にっこり笑顔で言ってくれた野木さんに笑顔を返し、小走りでかっくんの一歩後ろをついて行った。
『ハロー。遅かったわね』
『あのねーそれがねー…。えっと……』
『寝坊』
「はう!?」
はっきりとまあよく言ってくれましたね!?
遠慮は? 遠慮の二文字は!?
それか気遣いの三文字でもいい…!
『結局起きられなかったのかーマヒロ』
『わわわわたしじゃないわたろうくんよ…!』
『誰だよ』