秘密のMelo♪y④*ウィーン編㊦*

「よいか。藤峰家に入ったからにはその振る舞いがどうしても必要とされる。聞いたことはないかね? うちが藤峰の姓を持つ前のことを」


藤峰の姓を持つ前…。

貴族だったってやつ? あたしも実はよく知らないんだけど。


「フランスで有名な上流貴族だった。その血筋ゆえに、うちは未だ世間から敬遠される。だがそれでよいのだ」


「それでいい?」


「ああ。会社も随分と大きくなった。不正な取り引きを望む輩も出てくるだろう。だが敬遠されるその立場によって我々は、代々会社を守り続けているのだ」


……?

あの…。よく分かんない。


「なにも触れるな同じ空気を吸うななどと古臭いことは言わん。だがな、せっかく立場に…名前に守られているんだ。それを無にするようなことはしてはいかん」


……よく分かんないけど…でも。

初めて聞く、父様の考えだった。


「確かに世の中には、色んな意味で恵まれる人…そうでない人が存在する。それは仕方のないことだ。では、恵まれていると言われる人はなにをすればいいと思う?」


「…?」


「そうでないと言われる人に同情してはいけない。自分のその立場を守り抜くのだ。自分の力を過信してはいけない。恵まれたその立場に感謝するのだ」


「……ほお…」


「では、我々はなにに恵まれているか? …歴史だ。会社が成り立つのもすべては、四百年続くうちの歴史のおかげだ。それを私達は守り、後世に伝えゆかねばならない」


うちって……四百年続いてたんだ…。

知らなかった。


「では、それを守るにはどうすればよいか? ……それを考えたとき、お前はなににたどり着く?」


「……分かんない」


「そうか。…私はな、思うんだ。こういう言い方をしては聞こえが悪いが、貴族の末裔という立場を利用してしまえばいい…と」


利用…ですとな?


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